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一方で、「やや減った」(20.8%)や「減った」(16.1%)と答えた人々もおり、その理由には様々な生活の変化が影響していることが考えられます。例えば、日々の忙しさや新しい生活環境、自分自身の年齢や家庭の状況の変化などが、故人を思う時間を減少させる要因となっている可能性があります。また、時間の経過とともに故人との思い出を新たな形で心に刻み、前向きに日々を過ごそうとする方も増えているようです。
調査によれば、震災を経験した人々のうち、48.6%の方々が「これは人生にとって必要な経験だった」と捉えることで、自身の成長につなげようとしています。特に、家族を失った方々の56.4%がそう考えており、悲しみを糧に前を向く努力をしています。これは、「心のケア」の大切さを考えさせられる一例です。
心の隙間を感じながらも未来を見据える姿勢は、一人ひとりの人生にとって重要な意味を持ちます。たとえ時が経ち、町並みが復興しても、心の内に抱く思いは変わらず、今なお多くの人々の支えとなっているのです。
防災心理学の専門家である木村玲欧教授は、この現象について「亡くなった人への想いが減少するだけではなく、人生の節目で再び強まることがある」と指摘しています。人々が震災から受けた教訓をどのように自分の人生に統合していくのか、その過程が重要であると語ります。
また、震災経験を過去の痛みとしてだけでなく、人生の糧として捉え直そうとする動きも見受けられます。これはただ悲しみを乗り越えるというだけではなく、そこから何を学び取るかという新たな視点が求められていることを示しています。木村教授は、こうした変化を受け入れ、支え合うことが復興には不可欠であり、周囲の理解と協力が必要であると強調しています。また、防災教育や心のケアの重要性も改めて訴えています。震災の記憶を風化させることなく、次世代に教訓を引き継いでいくことが、未来への備えになるのかもしれません。